社畜とは

バブル景気のころ生み出された言葉である「社畜」が、最近、また広まってきました。

社畜は、よくブラック企業とペアで語られていますが、社畜の生態を探ると、それだけで社畜を説明するには不十分です。

ここでは、社畜の時代背景、一般的な定義付け、社畜の存在理由、社畜はこれからどうなっていくのかを見ることで、ブログ内での定義付けをします。

社畜は、なぜ生み出されるのか、社畜は本当に「悪い」のか、そしてあなたは社畜なのか、考えてみてください。

そして、社畜から抜け出すか、飼う側になるか、社畜のままでいるか決めましょう。

社畜の時代背景

社畜の誕生

「社畜」は、1990年の流行語だったので、今から30年以上も前からあった言葉です。

この頃は、バブル景気まっただ中で、日本中が浮かれていた時代です。不動産は高騰し、山手線の内側の土地がアメリカ全体と同じくらいの価値があるとか、東京都の予算が中国の予算を超えていたとか、今では考えられない時代でした。

日本中が浮足立って、働けば働くほどお金が入ってきた時代に、この言葉が生まれたのは興味深いことです。

社畜は失われた20年に静かに広がる

労働環境が激変するのは、バブル崩壊とともに雇用状況が悪化し、アウトソーシングが進むとともに正規雇用が減りました。これは、日本全体の雇用の確保、という大義名分のもとになされた変化です。

その後、なんとか、社会も落ち着きますが、「失われた20年」と呼ばれる経済低迷期に入ります。

この時期に定着した言葉が「ソフトランディング」です。
意味は軟着陸ですが、経済や他の分野でも、大きなショックを与えることなく、実体への影響を最小限に抑えて、減速させて「着地点」に穏やかに着陸する事を言います。

つまり、有効だけど激しい政策をやると社会が動揺するから、なるべく既得権益を持っているところが潰れないように、慎重にゆっくりとやりましょう、という技です。

失われた20年でも、ソフトランディングの波に乗れた企業は、安定していたました。そういう企業の中で、激しい動きも封じられることで社畜が浸透したのでしょう。

この時代は、社畜の存在が表に大きく出ることはないけれど、みんなの認識の中に定着していった時代と言えます。

低成長・マイナス成長の中で、やっと手に入れた正社員の地位を守るために、社畜の生き方が育成されたのではないでしょうか

再び脚光を浴びる社畜

2010年代半ば頃から、コミックで取り上げられるなど、第2次社畜ブーム?が来て現在に至ります。社畜の熟成期ともいえます。

社畜はどこへいく

いまはまだ、失われた20年から完全に脱却しきれずに失われた30年に移るのでは、といわれていました。

東京オリンピック・パラリンピックでの景気回復に誰もが期待を寄せていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大でこれも泡と消えそうです。

新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響は、まだ見えない部分が多いです。国や経済団体はソフトランディングでの着地点を必死に探しています。

これがかなわず、同一労働・同一賃金をうたう働き方改革が一気に進むと、会社に正社員がほとんどいなくなって、正社員という雇用形態を寝蔵とする社畜の存在がなくなる可能性もあります。

日本の今の社畜観

ネットで拾った社畜の定義をざっとまとめてみると次のようになります。そして、最後は、必ず脱社畜を勧めています。

  • 会社、仕事が自分の中心である
  • ブラック企業が社畜を育てている
  • 仕事のスケジュールのためならサービス残業、休日出勤も当然
  • 会社が絶対的存在で、自分が犠牲になっても会社のために働く
  • しかし、意欲や忠誠心があるわけではない
  • 会社にとって都合のいい人
  • 自分の権利を放棄し会社に預けている
  • 自分の意見を持ち合わせていない
  • 思考停止している。しかし、それを本人は気づかない。
  • Mである。自虐的に「私は社畜」という人が増えてきた。

現在の社畜の認識は、このようなものですが、もっと掘り下げて考えていきます。

社畜の生態

社畜には飼い主がいる

社畜ですから、餌を与えて育ててくれる飼い主がいます。飼い主は、ブラック企業であると言う人もいますが、ブラック企業だけではありません。

最悪の組み合わせが、ブラック企業と社畜というだけの話で、普通の会社でも社畜はいます。ブラック企業と社畜の関係は、「ブラック企業の特徴」にまとめてあります。

会社にとって、社畜は黙っていてもスケジュール管理を残業代も付けずにやってくれる、とても都合のいい社員です。

中小企業の事業主の中には、自分は社員から搾取するようなブラック企業ではないと思っている人もいますが、実は気付かずに社畜を立派に育てています。

それはそうです。社畜は給料さえ与えていれば、勝手に都合のいい社員に育ってくれるのです。
さらに、うまくいくと、社畜が上司になって新たな社畜を育ててくれるのです。

次のような会社は、ブラック企業ではない、社畜を育てていない、と言えません。

  • ホームページがない、更新されていない、更新されていても中身がない
  • 研修をしていない。していても内部研修や専門研修ばかりで、社員の資質を高める外部研修や外部講師を呼んでの研修、セミナーへの社員参加をしていない。
  • 仕事中は静かで電話や打ち合わせの話し声しかしない。議論のない会社は、社畜の温床です。

今の状況に満足している

社畜は、上司や会社の待遇に文句を言いながらも、自分からそれを変えようとはしません。会社と自分の関係に満足しているからです。

この関係を崩すものに対しては、敏感に反応するか、無関心を貫き通すかです。

社畜になる動機は、仕事さえしていれば、という仕事本体だけではありません。他の会社に比べて通勤が楽だから、職場の近くに子供の学校があるから(あったから)など、どうでもいいものが動機になっている場合もあります。

そして、一度、社畜になってしまうと、ホメオスタシス(恒常性、その場を維持しようとする力)が働いて、社畜から抜け出そうとはしません。

社畜でいる状況が楽だから抜け出そうとも思わないのです。
そもそも社畜の多くは、自分を社畜と思っていません。つまり、

  • 会社で、めんどうくさいことは何も考えないで仕事ができて、そこそこのポジションを苦労しなくても確保できている
  • 経済的にも贅沢さえしなければ自立している
  • 会社としても、社畜の社員がいることは、都合がいいのでそのままにしている
  • その状態は、社畜という社会的にネガティブなイメージであるのだが、自分では気づいていない

草原を歩いていたら、陽だまりがあって、座ると心地よかったのでそこから動かない、状態

社畜は「悪」か

社畜を取り上げた記事の最後は、必ず「社畜から抜け出すには」でまとめてあります。
社畜を悪として考えているわけです。

果たして、社畜は悪いのでしょうか。

社畜は成長を拒否している

セミナーや講演、人間的な成長を促す研修などの柱になっているのが次の考え方です

  • 現状から問題点を見つける
  • 問題点から課題を掘り下げる
  • その課題を解決する
  • 全体のPDCAサイクルを回していく

現状に満足せずに常に改善を行うことが、人間が成長するうえで必要という考えをベースにしています。

これは研修だけでなく、事業展開でも求められます。会社を成長する時もそうですし、いま、You Tubeで伸びている教育系のYouTuberは、これらをベースに話を組み立てています。

社畜は、成長に必要なスキルを捨て去っている、とも考えられます。

社畜が成長すると困るという事実

では、みんなが成長をし続けるとどうなるでしょうか、急激な成長のあとには、崩壊が待っています。バブル景気の崩壊もそうでしょうし、過去の戦争もそうだったかもしれません。

成長を続けることだけが正義ではないのです。失われた20年に創られたソフトランディングは、成長しないことで、多くの人が生き延びるスキルだったのかもしれません。

組織には、2割・8割の理論があって、2割の人が全体を引っ張って、8割の人はただついていくだけ。8割の人が無駄かというと、そうではなく、たとえ切り捨てても、残った2割の人のうち、8割はサボる方へ脱落するらしいのです。

自然界にも、働き蜂の8割はサボっているらしいですから、ただいるだけの人が組織を維持して上では、とても重要な役割を果たしているのでしょう。

社畜は、この8割に属しています。社畜が成長に目覚めしまうと組織が崩壊するかもしれないのです。

社畜は会社にとって都合の良い社員

社畜化の原因は、会社が有効な研修を受けさせない、あるいは自ら進んで学習しない、ですから、社畜化した社員を維持するのは会社にとって簡単です。ほっておけばいい。

給料さえ与えていれば、自分で考え仕事を行い、文句も言わずに会社に利益を与え続けてくれるのです。事業主にとっては、とてもありがたい社員です。

事業主の皆さんは、社畜にヘタに自我を与えてはいけません。社畜を一定割合確保しておかないと、会社経営がおかしくなります。

急に経済がおかしくなって、リストラが必要になっても、社畜は文句をいわないでしょう。事業主の皆さん、会社を良くしようと意見をする社員の首から切りましょう。社畜は会社のセーフティネットですから。

社畜は悪ではないが・・

社畜は、社会全体、会社組織で必要な人達です。特に、失われた20年、30年のような経済の低迷期には、社会を影で支えている重要な存在です。

しかし、社畜が「悪」を支えている場合があります。それは、ブラック企業に飼われている社畜です。

ブラック企業は、存在自体が「悪」になる時代が来ています。しかし、過労死やハラスメントで表沙汰にならない限り、国もほっているのが現状です。

国の興味の本質は、労働力の質と量です。労働者目線で政策を展開しているわけではありません。

ブラック企業は確実に社畜に支えられています。しかし、労働力の量の確保には貢献しているわけです。ブラック企業を叩くと、失業者が増えますので、それは国としては困るのです。

せめて、賢い社畜であれ

繰り返しになりますが、ブラック企業は「悪」です。
それを支える社畜も「悪」になります。社畜がいなくなれば、ブラック企業は明日から存在できないでしょう。

ブラック企業でなければ、ホワイトまでいかなくても、グレーな企業ぐらいなら社畜の存在意義はあります。

これらの企業にいる社畜の皆さんは、そのままの存在を続けていれば、自分で気付かなくても、社会の役に立っているでしょう。

ですので、ブラック企業にいる社畜のみなさんが、社畜をやめる、あるいはブラック企業を辞めることが、社会のためにも、自分のためにもなるのです。

そのためには、自分の会社がブラック企業か、自分が社畜かどうかをまず判断してください。そこからです。

再度の案内です。「ブラック企業の特徴

社畜は、正社員という雇用形態を寝蔵としています。これからは、働き方改革の中、労働力の流動化、つまり転職が一般的となってくることが予想されています。

雇用形態には、正社員ばかりでなく、契約社員や派遣社員などさまざまなものがあります。新型コロナウイルスへの対応の長期化が予測されるなか、企業もリスク分散から正社員を絞ることも考えられます。

もし、自分が社畜だと考えるなら、いろいろ学び、せめて、賢い社畜でいましょう。

いろいろな雇用形態を知りたい方は、「雇用形態を知ることで働き方はかわるのか」を覧ください。

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