就業規則は会社と社員との約束事です。10人以上社員がいる会社なら、あるはずです。就業規則には労働時間、賃金、退職金など、働くのにとても大事なことが書かれています。
入社時など、就業規則について説明を受けるはずです。内容を忘れているようなら、見直すことをお勧めします。変更も行われているはずですから、年に1回は見直して日頃の働き方の羅針盤にしてほしいです。
国は、「モデル就業規則」を提示しており、ほとんどの企業はこれを参考にしています。
平成30年の改定では、会社員でも副業ができる内容になっています。
就業規則は、閲覧できるものです。見たことがなければ、会社に聞いてみて下さい。もし、「重要書類に付き、閲覧できない」などと断られたら、いろいろな意味でブラック企業の可能性大です。
ここでは、働く際に重要な就業規則について、働く側からここだけは抑えておきたいものについて説明します。
モデル就業規則
常時10人以上の従業員を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。
厚生労働省は、モデル就業規則を平成31年3月(2019/3)に改定し、働き方改革に対応しました。
また、平成30年1月の改定で労働者の遵守事項から、
「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」
という規定が削除され、社員の副業・兼業が可能になりました。
皆さんの会社は対応していますか?変更後に内容を知らされましたか?
就業規則の読み方
個々の会社の就業規則を読み込んでいくのはできないので、モデル就業規則の中から、労働者が知っておくべき項目を説明します。
就業規則に必ず載っているのは、以下の項目です。
- 労働時間関係・・・始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
- 賃金関係・・・賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職関係・・・退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
これから説明するのは、始業及び終業の時刻、休暇、割増賃金、退職についてです。文中の〇〇条および条文は、モデル就業規則のものです。
始業及び終業の時刻
(始業及び終業時刻の記録) 第17条 労働者は、始業及び終業時にタイムカードを自ら打刻し、始業及び終業の時刻を記録しなければならない。
リモートワークの時代にタイムカード?と思いませんか。
出退勤管理をしている人は、タイムカードを押す場所と働く場所が離れている。このタイムラグをどうすればいいのか。などと真剣に議論されているようです。
必ずしも、タイムカードでなくても、会社と社員が労働時間や労働日数を確認できるものであれば、OKです。
あなたの会社が、タイムカード以外の方法をとっていたら、それに合わせて、就業規則の内容も変わっているはずです。
労働時間管理は、健康管理にも直結するので、タイムカード以外でも何らかの合理的方法で行われるべきものです。
退社のタイムカードを押してからサービス残業開始!など、今の時代には誰からも評価されません。喜ぶのはブラックな経営者と社畜化した上司くらいです。
あなたは、社畜になっていませんか?自分を見返したほうがいいですよ。
「社畜とは」
休暇
(年次有給休暇)
第22条 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに・・
5 ・・年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。・・
入社から6ヶ月勤務し、8割以上出勤した労働者には最低、10日間の年次有給休暇がもらえます。その後、勤務年数とともに増えていきます。上限はあります。
働き方改革法の改正で「5日分の年次有給休暇を取得させる」ことが、会社の義務になったために追加されたものです。
会社は、5日間社員を計画的に休まさなければならないわけです。
就業規則も働き方改革も知らないでは、出勤していたはずなのに、いつの間にか5日間休んだことになっていた、何ていうことも起こっているかもしれません。
割増賃金
賃金は次のように構成されています。
- 基本給・・・各人別に決まっている
- 手当・・・・通勤手当、家族手当、資格手当など
- 割増賃金・・時間外、休日、深夜労働につく割増賃金
この中で、知っておきたい割増賃金(残業代)を説明します。
時間外労働割増
週40時間、1日8時間を超えると残業代が発生します。
月の残業時間によって、割増率が違います。
- 月の残業時間が45時間以下までなら、25%の割増
- 45時間を超え60時間以下までは、35%の割増
- 60時間を超えると50%の割増
毎月、残業時間と割増率のチェックはしておきたいところです。
ちゃんともらっていますか?
ただし、中小企業は60時間以上の割増については、適用が猶予されています。
割増率のベースとなる時間あたりの賃金には、基本給のほか手当の一部も含まれる場合もあります。これは、就業規則に書いてあるはずです。
一回は、自分のタイムカードと照らし合わせて、会社から説明を受けたほうがいいです。そうすると、残業代の仕組みもわかってきます。
ちなみに、直近6ヶ月のうち連続する3ヶ月の残業時間が45時間を超えると、立派な退職理由になります。これは、失業手当をもらう時に有利になります。
「失業保険の手続きを有利にすすめるには」に少し詳しく書いています。
1年間の残業時間も規定があります。
1年間の残業時間が360時間を超えた部分については、40%の割増です。
これは、すぐ超えそうですね。
深夜労働、休日労働
残業が深夜に及んだ場合には5割以上、休日労働が深夜に及んだ場合には6割以上の割増率で計算した割増賃金をそれぞれ支払わなければなりません。
割増賃金の計算方法は、法律で定められているほか、就業規則や会社の規則でほかに定められている場合もあり、複雑です。
残業時間の中の休憩時間の規定や、休日出勤の際の代休もあります。残業が多かった月に一回、会社の説明を受けることを勧めます。わからないまま、やっていることが一番怖いです。
労働の対価として賃金が支払われます。サービス残業などは、自分の価値を自分から否定するばかりでなく、表に出た場合、会社も危うくする場合も考えられます。
就業規則を始めとする仕組みを頭に入れて、動きましょう。
退職
(退職)
第50条 ・・労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。
①退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して〇〇日を経過したとき
・・・
定年以外の退職の場合です。期間の定めのない労働者の場合を説明します。
多くの場合、就業規則には、〇〇の部分は30日となっているのではないでしょうか。
民法では、14日です。引き継ぎや給与の計算などありますので、民法より長い期間が取ってある場合が多いようです。
退職届を出してから、14日でいいのですが、角を立てないには、就業規則の30日を守り、その期間中に有給休暇を消化する、というのが現実的なところでしょう。
この期間があまりにも長い場合は、たとえば90日とか100日とか、従う義務はないと思いますが、会社と話し合って揉めそうなときは、労働局などに事前に相談するべきです。
退職は、個人にとっては人生の一大事であり、エネルギーも使います。
「退職のやり方」にまとめました。
いい会社なら、退職したくないですが、働き方改革の中、そういっていられないことになるかもしれません。
その他の重要なこと
これまで説明した他にも、以下のようなことが就業規則には書かれています。
勤務形態、労働時間、休日、解雇条件、定年、退職金制度、賞与・一時金、安全衛生、懲戒処分など
まとめ
就業規則は、働くうえで労働条件など、会社ごとに決めたものです。
会社、労働者とも、大事なものですが、周知徹底が図られていない場合が多々あります。
それでも、就業規則や法律のなかで、うまく回っている場合は問題ありませんが、なにか事が起きた場合、双方が困ることになります。
事が起きなくても、休日や残業などの問題は、身近なものですので、最低限の自分の会社のルールを知っておきましょう。
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