人はなぜ片づけないと気がすまないのか。片づけの心理を知る

「片づけ」は、数年ごとにブームが来るほど人間にとって大きなテーマとなっています。しかし、「なぜ片づけないといけないのか」ということを明確に説明してくれた本や考え方にお目にかかったことがありません。

散らかっているから、片づけないといけないのか、散らかっているとなぜ好ましくないのか。
「人はなぜ片づけるのか」という理由がわかってくれば、片づけの方法や考え方も整理されるはずです。

心理的な面から、この根本原因を考えてみました。

あなたのまわりの片付いている状態、散らかっている状態

働くシーン

片づけることは、現代の人間にとって大きなテーマになっています。仕事場でも、デスクまわりがよく整理整頓された人もいますし、机の上ばかりでなく、床の上まで書類を積み重ねている人もいます。

これをみると、片づけるか片づけないのかは性格なのか、と思ってしまいますが、そればかりで説明できないものもあります。

片づけない人の主張に「この煩雑な状態こそ落ち着くのであって仕事の効率があがる。自分にはどこになにが置いてあるか把握している。」というものがあります。

確かに、書類の山の中から手品のように必要な書類を出せる人もいます。しかし、職場での整理整頓は会社の共有物である書類や資料がどこにあるか、社員みんながわかることが必要なことから、デスクまわりが片付いていない状態は不適当です。また、屋外の現場や工場では、労働安全衛生上からも整理整頓は最初に取り組む事項です。

テレワークなど仕事のオンライン化で書類がどこになるか、だれでもわかる状態が求められてくると、片づけられない人は批判されることはあっても、容認されることはないでしょう。

個人の生活シーン

個人の生活シーンは、他人の目に触れにくいこともあり、その人の片づけ度合い、散らかり度合いが職場よりも強く浮き出ます。そして、片づけることはいいことだ、散らかっている状態は悪いことだ、という願望に似た認識が定着しています。理想はスッキリとした部屋です。

片づけ方の本や考え方は多く示されていて、今は「断捨離」「こんまりのときめき」「ミニマリスト」あたりがトレンドでしょうか。

「こんまりのときめき」については、まとめましたのでリンクをクリックしてください。

いずれも、多くなりすぎた身の回りのモノを捨てることが前提になっています。物が多い状態が良くない状態というのは共通していますが、人はなぜ片づけないといけないのか、という根本を明確に説明してくれている本や考え方はありません。

これを、心理的な面から考えてみました。

片づける心理状態

マズローは、人はやるべきことをやる能力を持っており、それは、もっといい世界をつくる能力で、最も単純なものとして、傾いた壁の絵をまっすぐに直すことをあげています。これは、「人はなぜ片づけるのか」の大きなヒントになります。

アブラハム・マズロー

アブラハム・マズローはアメリカ合衆国の心理学者で、アメリカ心理学会会長まで務めた人物です。人間の欲求を5段階の階層で理論化した自己実現理論が有名で、後の心理学や経営など各方面に大きな影響を与えています。

「完全なる経営」にみる人間の能力

マズローは、「完全なる経営」の中で、「B力」という言葉を使ってこのように論じています。

B力とは、やるべきことをやる能力のことであり、取り組むべき仕事に取り組む能力、現実に存在する問題を解決する能力、完遂すべき仕事を完遂する能力のことである。・・(中略)・・B力はもっといい世界を作る能力であり、世界をより完璧に近づける能力である。最も単純なB力としては、曲がったものをまっすぐに直し、未完成のものを完成させるといったゲシュタルト(全体性への希求)に基づく動機づけを挙げることができる。傾いた壁の絵をまっすぐに直すという行為は、その典型例である。壁の絵が傾いているというのは、ほとんどの人間にとって少々気持ちを乱される状況であり、傾きに気づいた者は、絵の所へ行ってまっすぐかけ直せという心の「要請」を聞き取ることになる。そして、実際にまっすぐかけ直すことで満足感を得ることができる。この場合、傾いた絵が誘因ということになる。ものごとを正す、散らかった部屋を掃除する、無秩序な状態に秩序をもたらす、ものごとを正しく処理する、未完成の仕事を完成させる、欠けた部分を補って全体像を把握する、完全な形態を実現する、といったことも同様だ。だれでも多かれ少なかれこうした傾向をもつものだ・・(略)・・

アブラハム・マズロー; 金井壽宏. 完全なる経営 日本経済新聞出版社. 一部要約

つまり、人は自分の心の中に「片づける」という能力を持っており、片づけは自分の心の中の「要請」に基づいて行われ、そうすることで心も満足することになります。

「B力」は、絵をまっすぐ直したり、散らかった部屋を掃除する理由として持ち出されているのでなく、人間はより良い方向へ進むもので、それはB力によるものだ、ちょっと要約し過ぎですが、そのようにもっと大局的な大切な力として論理展開されています。

アブラハム・マズロー; 金井壽宏. 完全なる経営 日本経済新聞出版社. 一部要約

心理面からの片づける理由

マズローの主張を「片づけ」に応用すると、次のようになります。

  • 人は、片づける能力を兼ね備えている
  • 片づける能力は、いい世界を作る能力の一つである
  • 片づいていないと、ほとんどの人は気持ちを乱される
  • 片づいていない認識から、片づけろという「心の要請」を聞く
  • 要請に従い片づけることで、満足感を得ることができる

この心の状態に沿った行動が取れる方法を探れば、片づけられるようになりそうです。

心理学からの結論「人間は片づける生物である」

マズローの考え方を片づけに適応させると、「人間は片づける生物である」といえます。これは、うれしい結果です。片づける能力を元々持っているのであれば、それを育てればいいのですから。

まとめ

人間はその心理から、片づけなければ気がすまない生物のようです。それでも、散らかってしまうのは、モノの量が増えていくと、日常の片付けでは追いつかなくて、散らかる量がコントロールできなくなるからです。

片づかない根本原因は、モノの量が自分の片づけ能力を超えて増えてしまうことでした。
モノをコントロールできる量に押さえて、人間の「片づけて満足する心理状態」を継続していけるとキレイに片づいた部屋でゆっくりと過ごせるようになりそうです。

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